© 2025 Misuzu Shibuya.
「最早、救いは私自身」
ヨナは思う
何が正しく何が間違いなのか
何が正義で何が悪なのか
皆の信ずる命により、明日には森の湖の底に沈む運命
祈る事すらもう無駄だと感じる
私が信じていたものは一体何だったのか
皆が信じているものは一体何なのか
もう遅い、明日には何も、残らない
またも女が別れを告げる。
愛するものが死にゆくのか
死にゆくものを愛してしまうのか
有無を言わさぬ呪いなのか
彼は旅に出る
女たちの髪の毛を手に、
背中の刺しの意味を知り、
己を理解し
己を殺すために。
生まれた時から彼女は自由だった
何を食べるのも 何を着るのも
何を話すのも 何をするのも
自由 自由 自由
彼女は嫌になる
何もしたくなくなる
それさえも咎められない
ただ生きながらえるための自由だけの国
「いつ死んでも良い」
彼女は私たちの考えるそれとは違う意味合いでそう呟き
今日もまた、ため息を吐きながら生命を口に運ぶ。